朝7時。
娘が自分でセットした目覚ましが鳴った。学校がある日は、7時に起きる。それが娘と決めた約束だった。
けれど、その日は病み上がりだったこともあって、すぐには起こさずに少し待った。
7時20分頃に起きてきた娘は、朝ごはんの前に学校から持ち帰った朝顔を見に庭に出た。
花が咲いているか。つぼみはいくつあるか。
娘は鉢の前で、ひとつひとつ眺めていた。
その姿を見ながら、私は時間を見ていた。
早く食べないと。
早く着替えないと。
間に合わなくなる。
朝ごはんの途中には、パペットスンスンのショートムービーがはじまって、また手が止まった。
「もう時間ないよ」
何度言っても、娘の時間はなかなか進まない。
結局、約束していた時間を過ぎた。
時間を守れなかったから、今日は学校まで一緒には行かない。玄関のドアまで見送るね。
そう伝えた。
約束したことや、時間を守ることは大切だと知ってほしかった。
ここで私が一緒に行けば、言っていることとやっていることが違ってしまう気がした。
ランドセルを背負い、出発する直前。
娘が小さな声で言った。
「一緒に行きたかった」
「約束だから仕方ないよ」
私はそう言って、玄関のドアを開けた。
出ていく娘を見送り、ドアを閉めた。
本当は、私だって一緒に行きたかった。
娘が見ていたのは朝顔で、私が見ていたのは時計だった。
あの朝、私たちはずっと違うものを見ていた。
でも、「一緒に行きたかった」は同じだった。